自動車に乗っていると必ず受けないといけない車検。2年に1度(貨物なら1年に1度)とはいえ、まとまった出費がかかるのは中々頭を悩ますことでしょう。
そんな心情も相まってか、車検シーズンが近くなると某SNSでは、“できれば車検は安い方が良い!”であったり“軽自動車で10万円を超える車検はぼったくられてる!”なんてコメントも多く見受けられます。
確かに、車検の費用は明細を見てもなんだかわかりにくいですし、本当に全部の整備が必要であるかどうかは疑問な面はあります。
ですが一つ、メカニックの視点で言わせてもらうと“普段定期点検や整備をしていないならあまり車検代はケチらないで”と声に出して言いたいところ。
特に雪国で走る車は雪が降らない地域の車に比べて痛みやすく、修理が高額になるケースはよくあります。
そこで今回はどうして車検が高額になってしまうのか、そして高額整備を拒み続けた車の末路について書いていきましょう。
そもそもなんで車検って高額なの?
まずは車検の費用構成について改めて確認しましょう。車検は点検整備料金の他に、法定費用というものが掛かります。
法定費用とは自賠責保険、自動車重量税、検査手数料といった車検に絶対必要なお金のことで、この金額は全国一律です。
例えば、1トン以上1.5トン未満の5ナンバー普通車(シエンタなどのミドルクラス車)の法定費用は次のようになります。
- 重量税:¥24,600
- 自賠責保険料(24か月):¥17,650
- 検査手数料:¥2,200
これだけで既に約4万5千円かかっています。
これに車検基本料や点検料、整備代金を加えたものが車検代として請求されます。
基本料や整備代金は店舗や車両状況によって変動しますが、車検基本料の相場は一般整備工場で概ね2~3万円程度。ディーラーだともう少し高くなる場合があります。
さて、ここまでで5ナンバーサイズの普通車の車検代金は、おおよそ6万5千円から7万5千円ほどかかっています。整備代金はほぼ含んでいないにも関わらず、です。
ここにオイル交換やブレーキパッド交換を含めれば、あっという間に10万円は超えてしまいます。
あまりに安い車検費用はほぼ整備をしない検査メニュー

つまり、車検費用で10万円もかかった!とはいえ、ミドルクラスの車両ならその内訳の半分が税金であり、お店の収益にはなりません。ではどうやってお店は利益を出すかといえば、整備費用で儲けるしかないわけです。
ですが、最近の自動車業界は不祥事が大々的に報道されたこともあって、車検代金が高いとすぐに不正を疑われてしまいます。特に小さな整備工場さんなんかはSNSでの評判を恐れて車検代金をなるべく安くするところもあるようです。
そうなるとどうなるか。当然車検にかかる費用を抑えるために整備は極力行わず、基本料金だけで車検を通して実施台数を稼ぐしか儲ける方法がなくなるわけです。
でもこれは決して車屋さんが悪いわけではなくて、ユーザーが安さを求めた結果、“車検をクリアするための点検だけ”という作業メニューになっただけの話。そのあとすぐ車がトラブルを起こしたとしてもそれは車屋さんの責任ではありません。(厳密にはそのような状態で車検を請け負う車屋さんに非がないわけではないですがあまりに値切られたら請け負ってしまう工場があるのが現状です。)
車検を通したばっかりで車が壊れるなんて整備不良だ!
すぐ壊れそうな状態で車検を通すなんておかしいじゃないか!と、いわれそうですが、ごもっともです。そんなおかしい状況でも実は車検は通そうと思えば合法に通せてしまうんです。

誤解を恐れずに言うなら、車検はあくまで車が安全に走行できるかどうかの点検であって不具合個所を見つけるためのものではないのです。
だから整備をしないで車検を通した場合、車検後にすぐ車が不調になる可能性は十分にあります。
ではここで車検で点検する項目をご紹介しておきましょう。車検でみられる項目は次の7項目。
- 外観検査:ヘッドライトやウインカーの電球切れ。タイヤのはみだしなどを点検
- 排気ガス検査:排気ガスがキレイに浄化されているか検査
- サイドスリップ検査:タイヤが4輪ともまっすぐ取り付けられているか検査
- ヘッドライト検査:ヘッドライトの光量と照らす向きを検査
- 制動検査:ブレーキとサイドブレーキの効き具合を検査
- スピードメーター検査:スピードメーターの誤差を検査
- 下回り検査:グリスの漏れやマフラーの穴あき、ハンドルなどのガタを検査
たったこれだけしか点検しません。はっきり言って新車から5万キロ以内の車ならほぼ何もしなくても車検に落ちることはないんです。もちろん、事故を起こしていたり、低走行だけど年式が古い車なら例外はありますが、ほぼ点検と調整で事足りてしまうのが実態です。
じゃあなんで車検で整備が必要なの?ちゃんと整備しないとどうなるの?
という話になるのですが、今回はここまで。続きは後編で書いていきましょう。